北未香緒里さん「選んできてくれたんだね」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

北未香緒里さん「選んできてくれたんだね」

『背負い苦しい生き方をしていた私を助けてくれたのがあなたです』
 

 現代のほとんどの人が恐れるもの。それが陣痛・出産です。鼻からスイカ。男の人には耐えられないとよく言われます。けれど、私は「陣痛・出産は痛くない」ことを私の元に来てくれた3人の子供達全員から教えてもらいました。それを一番に教えてくれたのは今から7年半前に出産した第一子です。
陣痛や出産自体は私自身ももちろんとてもドキドキしていました。しかし、ある大先輩お母さん(=おばあちゃん)の出産話を聞いて衝撃が走ります。
「子供を産むって最高に気持ちいいわよ!夜の営みと一緒なの♪何度でも産みたいくらい!」
初めて聞いたときは耳を疑いました。
たしかに今では考えられない。けれど、江戸時代では東京・大阪間を3日間で走ることができた男性、米俵6俵(300kg)をかつぐことができた女性がいた。ということは、人間が本来持っている力は現代人では想像できないものがあるということ。そして、江戸時代の人たちに一番近いのが、おばあちゃんたちなのだ。その話を聞いて以来、陣痛・出産に快感を感じた人がいるなら、その快感の方を信じてどうやって同じようにできるようにするかだけを考えて準備をしていきました。
さあいよいよ本番。陣痛が来た時はあまりよくわかっておらず、ぐぐぐぐぐ~~と、内臓が動いている感じ。何回か来てから「あれ?これ陣痛かな?」と思って時間を計り始めました。
痛さはそこまでではない。今でも覚えているのは不安感です。これが陣痛なのか?これから何が起こるの?イメトレはしていたけれど、よくわからなくて不安。夫は偶然自宅にいたけれど、お産については無知。とにかくお産というこれから訪れることについて頼れる人がいない。この環境が不安でした。初産の場合、10分間隔になっても1時間自宅で待つ必要があります。その2時間くらいが気持ち的には一番辛かった時間。
不安だった2時間。やったことは母親学級で言われていた深呼吸。とにかく息を深く吐く。あ、波が来た、と思ったらとにかく息を吐く。およそ10秒くらい。いけるところまで。出る息が無くなっても、吐く。吐く。吐き続ける。一回の陣痛の波でうまくいくと2回くらい息を吐いていました。
すると、感じ始めたのです。わが子の頭の位置がさっきの陣痛の時より少し下がってきていると。この感動と言ったらありませんでした。
お腹の中にいる我が子が、母の身体のことを想いやりながら、考えながら、少しずつ少しずつ下りてきてくれている。それがとてつもなくしあわせで、しあわせで。波が来ている時は、息を吐き、
「大丈夫だよ。お母さんの身体、やわらか~くしておくからね。ふわふわ~。」
波が落ち着いたら、
「また少し進んだね~。楽しいね~♪うれしいね~💛きっともうすぐ会えるね~💛」
とお腹でがんばっている我が子と会話する。
一緒に歩んでる。進んでる。言葉ではなく、感覚で、お腹にいる生命とやりとりをする。はじめての共同作業。誰かとこんなに一体になれた経験したことなんてもちろんありません。だから私の陣痛・出産の記憶の中に痛いという記憶はありません。耐えるという感覚もありません。むしろ、自分自身はどんどん柔らかくなっていくから、そんな風に思わなかったのだと思います。

 その後、私は(今振り返ってみると)産後うつとなり、がんばること、自分で背負うことをやっていては生きていけないということに7年かけて気づきます。その起点となったのは間違いなく、長男との出産体験でした。
私たち自身が持つ力を引き出してあげられれば、無限のパワーが溢れてくる。私は全世界の女性たちとつながり、出産をしあわせな出産に変えていきたい。
こんな使命を伝えてくれたのはえいただね。きちんと話していなかったあなたの出産話を第三子が生まれた後に話したね。その時のはにかんで嬉しそうな笑顔が私の目に焼き付いています。本当に本当にありがとう。あなたがいなければ下2人を育てることはできなかった。自ら進んでお手伝いしてくれるあなたは、少し無理していた時もあったかもしれない。でもきっとあなたが最初に来てくれたことは運命。本当にありがとう♡大好きだよ。

 

大阪府 北未香緒里さん
題名:選んできてくれたんだね
子どもへ伝えたい言葉:「背負い苦しい生き方をしていた私を助けてくれたのがあなたです⁡」