堀 晃二:農家と消費者を繋ぐ青果卸業の志事 [志事] | 誰かの役に立つ「志事」の素晴らしさ

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2022.07.27

堀 晃二:農家と消費者を繋ぐ青果卸業の志事 [志事]

―品質と価格のバランスを大切に―



■消費者が求める「野菜」と農家が求める「野菜」のギャップ

私はアイワ青果株式会社の代表取締役を務めており、青果物の卸売りを行っております。また、東京都青果物商業協同組合の役員を最年少で就任し、東京都から選任される取引委員会の委員も務めております。

業務内容としては、飲食店や給食センター、ホテルなどの業者に向けて市場から野菜をお届けすることをメインに、海外への輸出やネット販売も行っております。

コロナをきっかけに、業務卸に加えて小売りも始めました。一般の方と接していく中で「安全安心・美味しい・安い」が求められていることを痛感しております。ところが「安全安心・美味しい」に「安い」を求めてしまうと、どこかにしわ寄せが行ってしまいます。

安全安心で美味しいものを作るために、農家さんが手間暇をかけて育てた野菜や果物を安く買い叩かれてしまうと、農業を続けることが難しくなります。誰が悪いということではありませんが、テレビなどで野菜や果物をとても安く売っているお店の報道を見ると、安いことが正義のような見せ方になってしまっているように感じております。消費者と農家さんの間にいる立場としては、農家さんのことも大切にしていける社会になることを願っています。


■品質に見合った価格設定を



私が一貫して主張していることは、値段を決める立場にあるのが市場だということです。「安くしないと売れない」という八百屋さんばかりでは農家さんには全く還元されず、農業を続けることが難しくなって廃業に追い込まれる可能性も出てきます。

組合としても、こだわって頑張っていらっしゃる農家さんには続けていただきたいと思っています。そのためには、私たちが品定めをして値段を決められる権利を活用し、値付けにしっかりと責任を持つことで、農家さんに還元することが大切だと思います。

しかしながら、組合には戦後を生き抜き“野菜=安い食品”という中で育ってきた経営者が多いため、「野菜は高いと売れない」という固定観念が非常に強く、なんでも安くという考えの方が多いのが現状です。そこを内側から変えていくことが、最年少である私の役割だと思っています。

また、日本市場は海外からも非常に敬遠されています。農薬関係で規制の厳しい日本に合わせてお金をかけて作っても、日本側から更に安くするよう強く要求されます。日本よりも中東の方が農薬も厳しくなく、それでいて高く買ってくれるということから、いずれ日本は輸入できなくなるかもしれません。そうならないためにも、現状を伝えて改善する必要があると思います。


■AIとの共存



“AI=敵”というイメージや捉え方になりがちですが、私はAIができることは全部やってもらっても良いと思っています。農家さんでも、作物が育つ環境と栄養価の関係性などのデータを把握するサポートとして、積極的に頼っても良いと思っています。

一方で「見て・触って・食べる」ことはAIにはできません。最終的には人が食べるものとして大切な食味や食感の判断はAIでは難しいため、人の手で行う必要があります。

市場の中でも、システムの部分はAIに任せても良いと思いますが、競売で値段を決めることは難しいと思います。値段決めもオートメーション化してしまうと、値段ありきになってしまいます。私たちが大事にしたいことは“品物”であるということです。昨年よりも今年のできが良かったら高値をつけるという判断は、毎年作物を見比べている人間だからこそ分かる部分だと思います。

また、商品の分配の割合もAIでは決めることが難しいと思います。商品の分配ルールは固定化しているものではなく、競り人との日頃の対話や市場環境、社会情勢、取り引きの状況に応じて振り分ける数が決まります。その判断は、やはりAIでは難しいと思います。

農家さんも競り人との付き合いがありますので、市場で出したものを全てAIがロジック的に処理してしまうと、反発が生まれてしまうと思います。同じ値段でも、ずっと扱ってきた競り人が農家さんの声を聞いたうえで決める値段と、AIが機械的にはじき出す値段では、農家さんの受け止め方も全く違うと思います。AIに任せるところと、人が行うところを上手に使い分けていきたいです。


■子どもの野菜嫌いに悩むお母さんへ



野菜嫌いの子どもが多いとよく聞きますが、野菜をひとくくりにしないでほしいなと思っています。たとえば、ピーマン嫌いの子にピーマンを食べさせようとすると、つい「お野菜ちゃんと食べなさい」と言ってしまうと思います。そうすると、子どもは“野菜=ピーマン=嫌い”となってしまいます。

子どもの舌は大人よりも敏感ですので、ピーマンのような苦味は“毒”と脳が判断してしまいます。「毒物だから身体に取り入れない」というのは、ごくごく当たり前のことです。子どもが成長する過程で食べられるようになるパターンもありますので、栄養があるからといって嫌いな野菜を無理やり食べさせるのではなく、好きな野菜を積極的に食べながら「野菜は美味しいね」と声をかけてあげてほしいです。

お母さんもお子さんが食べないことにストレスを感じるのではなく、「うちの子、トマト好きだから今日も買って行こう」という前向きな気持ちで、お子さんと野菜を付き合わせてあげてほしいなと思います。




堀 晃二
アイワ青果株式会社 代表取締役
会社は今期で50期を迎える。創業者が高齢になり病気を患ったことをきっかけに会社を買い取って2代目に就任。現在は、東京青果物商業協同組合の役員を最年少で務め、東京都から選任される取引委員会の委員も務める。農家と消費者の懸け橋になるため、強い志を持って日々取り組んでいる。


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