栗田やよい:高齢者に寄り添い心を遣う看護の志事 [志事] | 誰かの役に立つ「志事」の素晴らしさ

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2022.05.29

栗田やよい:高齢者に寄り添い心を遣う看護の志事 [志事]

「人生の最後を快適に過ごしほしい」


■信念を貫くため病院勤務から介護の世界へ
私は看護師として特別養護老人ホームの医務室に勤務し、病院や施設あるいは在宅で療養している方を対象に看護をしております。

初めは、総合病院の急性期病棟に勤めて手術室でも働きました。「もっと患者さんを癒したい」「寄り添いたい」という思いとは裏腹に、日々の忙しさから業務に追われ、患者さんの声をしっかりと受け取れずに寄り添えないことがとてもストレスでした。患者さんとの関係が一期一会であることも腑に落ちず、次第に「長く療養されている方のサポートをしたい」と思うようになりました。

20代後半になった頃、在宅医療に興味を持ったことで訪問看護師に転職し、ケアマネージャーの資格を取って介護の世界で17年勤めて今に至っています。

看護師を目指したきっかけは、身近にいた叔母が看護師をしており、その働く姿がとてもハツラツとして輝いて見えたことが大きく影響していると思います。そして、物心がついた時から七夕の短冊に「看護師さんになりたい」と書くほど、看護師を目指すことがとても自然なことでした。


■幅広い看護の志事
病院勤務の時はドクターの診療補助として、患者さんがベストな状態で治療を受けられるように心身のケアをしました。特に手術は患者さんにとって人生を変えるような出来事ですので、全力投球で看護していました。

一方で、在宅医療や施設で療養している方の看護を始めてからは、治療だけでなく心身の健康を保つことがとても大事であると実感しています。

高齢者施設にいる方のほとんどが自身での体調管理が難しく、体調が悪いことを自分で表現できない方も多いため、熱や顔色の変化などいつもと様子が違うことを読み取って先生に指示を仰ぎます。

また、高齢者の方は転倒による骨折や脳出血による急変、あるいは誤嚥によって重篤な肺炎になることもあり、施設ではレントゲンが取れないため緊急時には救急車に同乗して病院へ付き添います。

こうした日々の業務の中でも特に気をつけていることは、薬の服用です。介護職員が80人いる利用者さんへ確実に薬を提供できるように、看護師が何度もチェックして管理しています。一口に看護の仕事と言っても業務内容は様々あり、幅広く捉えています。


■まさに天職!看護師を続けられる魅力とやりがい


特別養護老人ホームは、ご家族の高齢化や病気の悪化などによって、在宅療養が難しくなった方が最終的に移り住む場所です。認知症の方が多いため、会話がかみ合わない方や会話自体ができない方もいらっしゃいます。そのような方の体調の変化に気づき、辛いことを取り除いてあげたいという思いから、その方が安らぐ医療を提供できた時はとても嬉しいです。

時には必要な処置を行おうとしても、痛みや恥ずかしさから嫌がられたり叩かれたりして拒否されることもあります。それでも、患者さんの傷が治り、手当で痛みがあっても終わった後に「あぁ、良かった」「さっぱりした」と患者さんの表情が変わると、自分の行いが患者さんの健康を保つためにお役に立てていると実感できます。

また、介護施設は看護師の数が少なく、主に介護職員がご家族に代わって高齢者を誠心誠意サポートしています。その介護職員が安心して介護できるようにサポートできることも嬉しく思っています。

大変な中でも、患者さんや仲間からプラスのエネルギーをたくさん頂けることにやりがいを感じています。チームみんなで高齢者をサポートし、多職種連携で取り組めることがとても魅力的です。

看護師を辞めたいと思ったことは、一度もありません。様々にある看護の業務の中で、自分には難しいと思った業務はありますが、看護師以外の仕事に就こうと思ったことはありません。それくらい、この仕事にやりがいと魅力を感じています。


■志事との向き合い方
心に余裕がないと、患者さんに優しく接することは難しいと思います。新人の時は、忙しさから「ちょっと待ってて」が増えてしまい、どんどんと仕事が伸びて患者さんの要望に応えられないことがフラストレーションでした。それが日々積み重なっていき「私は何のために看護しているのだろう」と思ったこともあります。

今では、患者さんや利用者さんと向き合う時間を優先して作り、後回しやタイトにできるお仕事は合間にやるなど段々と振り分けられるようになったことで、心に余裕をもって仕事に取り組めています。




■AIだからできる看護の志事
看護において一番大変な業務は、血圧や熱といった患者さんの状態を観察した記録を残すことと、患者さんへの配薬です。

介護施設でも電子カルテが導入され、情報をシェアできるようになりましたが、毎日何十人分ものデータを入力することはとても大変です。そのうえ、職員同士で記録を遡る時に紙媒体の方が見やすいという理由から、電子カルテへの入力と同時に紙にも記録を残しているのが現状です。

また、患者さんへの配薬もとても気を遣います。間違えないように何度も確認するので、ここにも多くの時間を使います。

負担となっている電子カルテへの入力や配薬業務をデジタル化することで時間短縮できれば、患者さんや利用者さんとの会話が増えると思いますので、オートメーション化を切に願います。


■AIに取って代われない看護の志事


心と心の触れ合いは、やはりAIでは難しい部分だと思います。
中学2年の娘に「看護師の仕事はAI時代になくなるか?」と質問したところ、「看護師は無くならないでしょ。ママが働いている施設のおじいちゃんたちが話していることや思っている気持ちは、AIでは分かってあげられないよ。」と答えが返ってきました。まさにその通りだと思います。

看護師として経験してきたことや学んできた知識と技術があるからこそ、「痛いな」「苦しいな」だけではなく「寂しいな」「ちょっとお話したいな」といった患者さんたちの微妙な気持ちを読み取り、助けになることができます。こういった心の触れ合いは、AIには代替えできないと思います。

人間対人間なので合う・合わないはありますし、介護職員ではなく看護師に話したいと言われることもあります。塗り薬一つとっても「看護師さんに塗ってほしい」という要望もあります。「栗田さんが来るのを待ってたよ」と言われることもあり、精一杯お仕事してて良かったなと思います。
AIが普及してきても、私にしかできないことで精一杯がんばりたいなと思います。
 
栗田やよい
特別養護老人ホームの医務室にて勤務する看護師。
看護師歴28年目。
ひとりひとりに寄り添い、助けになりたいという思いで日々現場に立っている。


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