全粒穀物とアンチエイジングの最新研究が続々と⑥ [薬学博士からのアドバイス] | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2021.07.08

全粒穀物とアンチエイジングの最新研究が続々と⑥ [薬学博士からのアドバイス]

 

科学的栄養学No.162

◇全粒穀物とアンチエイジングの最新研究が続々と⑥
 ・腸で発酵を促す食物繊維を豊富に含む全粒穀物の底力

さて、全粒穀物でメタボ改善などの効果をしっかり得るために、気をつければならないことが2つあります。

1. 毎日とり、長く続ける
主食を全粒穀物に置き換えて、毎日、長い期間継続することです。

腸内環境を変えるには、コンスタントに腸内細菌のエサとなる食物繊維を送り届けることが大事。

まずは、習慣化しやすいよう1日1回から始めてみましょう。

私も、そこから始め次第に回数を増やし、今は朝夕でとることができるよう習慣化できました。

1日2回の全粒穀物で、ヒト試験においても効果が得られています。

2. 多様な食材からとる
1種類だけに偏らず、いろいろな種類の全粒穀物を摂ること。

大麦のβ-グルカンは、大腸の真ん中あたりまでで発酵する一方、全粒粉や小麦ブランに含まれるアラビノキシランは、食物繊維が絡まり合っているため、長い大腸を通過するうちに発酵を受けやすい状態に変わり、大腸の奥のほうで発酵します。

腸の入り口から奥まで、まんべんなく発酵が起こるように、多種類の全粒穀物をとりましょう。

私の例をご紹介しますと、朝は、ドイツのメステマッハー社の有機ライ麦パン(有機全粒粉ライ麦、有機小麦タンパク、有機亜麻仁、有機大豆ミール、有機ヒマワリの種・・など数種混合)を、夕食は国産の十六穀米(黒米、もち米、押麦、白麦、もち麦、黒豆、小豆、発芽玄米、焙煎発芽玄米、緑米、挽割はと麦、発芽赤米、米粒麦、きび、ひえ、たかきび)を主食として摂っています。

全粒穀物の健康効果は多岐に及びますが、最新研究から高血圧の改善や大腸がんリスク低下も期待できることが見えてきました。

 心筋梗塞や脳卒中など突然死リスクを高くする高血圧対策として減塩があります。しかし実際には減塩を継続するのは難しく、セルフケアではなかなか改善しにくいのが問題となっています。


全粒穀物には、この高血圧のリスクを下げる可能性も見いだされてきています。
 
高血圧を発症していない19~68歳の日本人男女944人を3年間追跡した研究からは、これを裏付ける結果が得られています。

全粒穀物を「ときどき、またはいつも摂取する」グループは、「全く摂取しない」グループよりも高血圧の発症リスクが有意に低くなったと報告(Nutrients. 2020 Mar 26;12(4):902.)。

詳細なメカニズムはまだ不明ですが、食物繊維をとることによって腸内の発酵が促されて産生される短鎖脂肪酸が、血圧調節を邪魔する腎臓の毒素を減らすのでは、と推測されています。

 さらに、全粒穀物の摂取量は日本人女性の死亡率1位、男性の死亡率3位である「大腸がん」リスクと関連が強いこともわかってきました。

 2019年に発表されたアメリカの研究( JNCI Cancer Spectrum (2019) 3(2): pkz034 )において、全粒穀物の摂取量が少ない人では大腸がんリスクが高まる、と報告された(図参照)。

この研究は、食事とがんリスクとの関連を評価したもので、数あるがんの中でも、食事の影響が最も大きいのは大腸がん(結腸・直腸がん)だった。そして、大腸がんのリスクの中で最も関連が深いのが「低全粒穀物」、つまり全粒穀物の摂取量が少ないことだとしている。

前述の穀物の機能性に詳しい大妻女子大学家政学部の青江誠一郎教授は、「腸内細菌叢(さいきんそう)の乱れは、腸内細菌の種類の減少(多様性の低下)や有用菌の減少をもたらし、炎症性腸疾患や肥満症、動脈硬化、糖尿病、がんなどの病気リスクを高める。

いっぽう、全粒穀物をとると、豊富に含まれる発酵性食物繊維をとることができ、腸内の発酵によって短鎖脂肪酸が産生される。この短鎖脂肪酸が、腸内を有用菌のすみやすい環境に整えたり、腸粘膜バリアを保護したり、炎症を抑えるといった働きをすることに関わるのではないか」と述べています。

 メタボ改善にも大腸がんリスク予防にも関わる短鎖脂肪酸を増やすには、全粒穀物をしっかりとることで腸内細菌叢を改善することが重要どということが分かってきました。

 
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