ココアのフラバノールが脳血管と認知の機能を高める [薬学博士からのアドバイス] | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2021.08.12

ココアのフラバノールが脳血管と認知の機能を高める [薬学博士からのアドバイス]



科学的栄養学No.168

ココアのフラバノールが脳血管と認知の機能を高める

 

ココアに含まれるポリフェノールのフラバノールを高用量摂取すると、脳の血管の機能が活性化され、同時に一部の認知機能も向上することが英国の報告で明らかになりました。

 

フラバノールはポリフェノールの一種でフラボノイド系の化合物で、緑茶の成分としてよく知られているカテキンやエピカテキン、エピガロカテキンなどもおなじフラバノールに分類されます。

 

ココアの他に、ベリー、ブドウ、リンゴ、紅茶などにも豊富に含まれています。

 

これまでに、フラバノールを摂取すると手足などの末梢血管の機能が向上したり、加齢による認知機能の低下を防ぐ作用を持つ可能性が示唆されていました。

 

今回、米イリノイ大学のGabriele Gratton氏らは、フラバノールが脳血管の機能と認知機能を高めることを明らかにしました。
 

試験は、普段喫煙経験のない健康な若い男性18人で行われました。
 

まず、フラバノールの摂取が脳血管の機能に影響するかどうかを検討するため、脳の血液中の二酸化炭素濃度がフラバノール摂取前後にどう変化するかを調べた。

 

二酸化炭素濃度の濃い空気を吸うと、血液中の二酸化炭素濃度が上昇し、酸素濃度が下がります。このとき、健康な血管は、脳への血流を増やしてより多くの酸素を送り、二酸化炭素を追い出す(=酸素化)ことでこの事態に対応します。

 

そうした変化がどの程度みられるかを観察。
 

参加者は、最初に二酸化炭素を5%含む空気を吸い、この検査を受たたあと、フラバノール含有量が多いココア(高用量ココア、フラバノール681.4mg)またはフラバノールをほとんど含まないココア(低用量ココア、フラバノール4.1mg)を飲み、2時間後に再度同じ検査を実施。

 

さらに2週間以上経過した後に、初回に高用量ココアを飲んだ人には低用量ココアを、初回が低用量ココアだった人には高用量ココアを飲んでもらい、同じ検査を行った。

 

その結果、検査を受けた17人のうち13人で、高用量ココア摂取の2時間後に5%二酸化炭素を吸入した後に、酸素化ヘモグロビンの量が大きく上昇。上昇幅は、低用量ココア摂取後に同じ実験をした場合の3

 

また、吸入から酸素化ヘモグロビンの増加が始まるまでの時間は、低用量ココア摂取後より高用量ココア摂取後のほうが約1分短く、高用量フラバノールの摂取により、脳の酸素化の反応が、より強く、より素早く生じることが明らかになりました。
 

このような反応の違いは、脳画像検査でも確認されている。

 

次に、フラバノールの摂取が認知機能に及ぼす影響をココア摂取後2時間の時点で調べた。
 

検査に用いたのは、日本で脳トレ(脳トレーニング)の1つとしてテレビなどでも紹介されることが多い、色読みテスト。

 

結果は、8人中14人において、ココア摂取前および低用量ココア摂取後と比べて、高用量ココア摂取後に一部のテストで成績が向上

残りの4人には、認知機能検査の結果に高用量フラバノールの影響は見られなかった。

これら
4人には、高用量ココア摂取後に、脳の酸素化の有意な上昇も見られていなかったとのこと。

 

4人の結果については「ココアを摂取する前から酸素化レベルが高かったために、ココアによるさらなる改善の余地が少なかった可能性はある」と著者らは考察している。

 

結果を総合すると、フラバノールが、迅速かつ強力に脳の血管の酸素化反応を誘導すること、それと並行して、より高レベルの認知機能を求められた際の解決能力を高めることを示唆していた。

 

一般に、脳の酸素化の不調は高齢者に多く、心血管疾患や認知症のリスクが高い人にも認められている。

 

今後は、こうした人たちにも、高用量フラバノールが効果を示すかどうかを検討する必要があると著者らは述べている。
 

なお、今回用いた高用量フラバノールココアによってもたらされた効果が、チョコレートを摂取した場合にも同様に見られるかどうかは不明とのこと。

 

チョコレートに加工される際にフラバノールの含有量が低下すること、チョコレートの摂取量が多くなれば、糖分と脂肪分の摂取量も増えることを考えると、効果が得られる量を日常的に摂取するのは困難とのこと。

 

著者らは、ココアにこだわらず、フラバノール含有量の多い食物(ブドウ、緑茶、リンゴ、ベリーなど)をいろいろと摂取するほうがよいとの考えを示している。

 

原著論文はこちら☟

Gratton G, et al. Scientific Reports volume 10, Article number: 19409 (2020)

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