脳は加齢で衰える? ホント?、ウソ? [薬学博士からのアドバイス] | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2021.08.19

脳は加齢で衰える? ホント?、ウソ? [薬学博士からのアドバイス]



科学的栄養学NO.169  
 

◇脳は加齢で衰える? ホント?、ウソ?

 クイズで考える脳の老化

 

【問題】加齢とともにもの忘れ、集中力の低下など、最近めっきり脳が衰えてきたと実感している人はいませんか。

 

今回は、脳と加齢の関係を取り上げクイズで学んでいきます。以下の脳に関する記述で、間違っていると思うものをお選びください

 

1)脳は加齢により委縮していく

2)脳の老化は、思考、理性、コミュニケーションなどを
   担う前頭葉から始まる

3)脳の神経細胞は加齢とともに減り続ける一方

4)脳は、外部からの刺激によっていくつになっても

   変化する力をもっている

 

これまで、「脳の機能は加齢によって衰える」、「脳の老化は止められない」など様々な説が言われてきました。

 

歳のせいでどうも脳が衰えてきたと思っている人たちは、この影響を受けています。
 

この説はある意味では正しいといえる部分もありますが、間違っているともいえるのです。

 

なぜなら、私たちの脳は後頭部から発達していき、脳の中枢部ともいえる前頭葉は一番最後に発達することが分かっています。

そして、前頭葉が発達を遂げたあとは、今度は前頭葉の脳細胞からが徐々に減り、萎縮していくのです。

 

それに伴い脳の体積も減っていき、機能も低下していきます。

 

こうした加齢による脳の変化は避けられない事実です。
 

しかし、脳の機能はいくつになっても高められることが近年分かってきたのです。

 

 具体的には、

1)脳の一部では年齢を重ねても神経細胞が新たにつくられること、そして
 

2)脳には外部からの刺激によって変化する力があることが分かってきました。
 

このことは私が毎月開催している「だれでもよく分かる102歳を目指し”動けるからだ”でらくらく生きる脳科学的健康講座」で詳しくお伝えしてきたところです。

 

ここで、復習もかねて振りかえってみましょう。
 

まず、脳の構造は「大脳」「小脳」「脳幹」の3つに大別されます。
 

このうち、全体の80%を占めているのが大脳。大脳はさらに、4つの領域に分かれています。
ものを見る視覚機能を司る「
後頭葉」、音を聞く聴覚に関連する「側頭葉」、触覚や運動機能を司る「頭頂葉」、そして、思考や判断、感情や理性、コミュニケーションといった高度な働き(高次認知機能)を担う「前頭葉」。

 

大脳の発達には、個人差がありますが、成長する順序や時期にはおおよその流れがあります。

 

これまで16万人にのぼる脳のMRI画像を解析してこられた、東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授は、ずばり「後ろから発達して、前から壊れる」と明言されています。

 

生後からすぐに発達するのが、脳の後方に位置する後頭葉と側頭葉。3歳になる頃には、見る・聞くことは、大人と同じレベルまでできるようになります。
 

また、言葉の理解も生後6カ月頃から進んでいきます。
 

35歳頃には、脳の中央部の発達に入り、頭頂葉にある感覚野や運動野の成長スピードが加速します。
 

 最後に発達するのが、脳の前方に位置する前頭葉

 

前頭葉の発達は12歳前後の思春期がピークで、人によっては20歳頃まで成長。この前頭葉が完成すると脳の体積は最も大きくなり、子どもの脳から大人の脳になります。

 そして、大人の脳が完成した直後から、脳の老化がゆっくり始まるのです。
 

それも、「最後に発達を終えた前頭葉から、すぐさま萎縮し始めます」と瀧教授。
 

もっとも、そのスピードは緩やかで、直ちに脳機能に影響が及ぶわけではありません。

 

ただ、脳の神経細胞の数はどんどん減っていき、ごく一部を除いては、その後に増えることはありません
 

その代わり、神経細胞同士の結合、すなわち「神経細胞間のネットワーク」を増やすことはできます。
 

そして、健康な脳を維持するために大切なのは、実は神経細胞の数よりも、このネットワークのほうなのです

 

これまでは、ネットワーク構築のピークを過ぎると脳の回路を増やすことは難しいと考えられていました。
 

しかし、 2004年に科学雑誌「ネイチャー」に発表されたドイツの大学の研究チームによって、脳に刺激を与え続けることで、いくつになっても時間はかかるが既存のネットワークを強化したり、新たなネットワークを広げたりすることができることが明らかになったのです。

 

こうした脳の変化する力は「可塑(かそ)性」と呼ばれます。

さらに、驚くことに、いくつになっても神経細胞が新たにつくられていることが、
1998年、米国のソーク研究所のチームによる研究で判明したのです。

 

それは、記憶のコントロールという重要な役割を担っている「海馬」と呼ばれる領域です。
 

アルツハイマー型の認知症は、この海馬の萎縮から始まり、高次認知機能を司る前頭葉の萎縮へとつながっていきます。

その結果、思考力や判断力といった認知機能の低下が起こり、最終的には歩く、食べるなどの、生きるために必要な運動領域のコントロールも失っていきます。

 

すなわち、認知症の予防をはじめ脳の健康を保つには、海馬と前頭葉の体積を維持することが重要だというわけです。

 

「いくつになっても海馬で新たな神経細胞がつくられることに加えて、外部の刺激によって変化する「可塑性」によっても、海馬をはじめとする脳の体積を増やせるということ。

 

つまり、脳は何歳からでも変えていくことができるとというのは、驚きとと大きな希望になります。

 

正解(間違っているもの)は、

3)脳の神経細胞は加齢とともに減り続ける一方 です。

 

脳の一部では、年齢を重ねても神経細胞が新たにつくられることが分かっています。

 

・・・・・・・

 

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