クイズで学ぶ認知症 [薬学博士からのアドバイス] | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2021.04.15

クイズで学ぶ認知症 [薬学博士からのアドバイス]



科学的栄養学No.151

◇クイズで学ぶ認知症

 

【問題】 「アルツハイマー病」認知症全体の7割近くを占めています。その原因の一つとして、脳にアミロイドβというたんぱく質のごみがたまることで神経細胞が壊れていくとされています。では、このアミロイドβがたまり始めてから発症するまでの期間は、どのくらいだと思いますか?
 

以下からお選びください。

 

11年未満

212

3510

42030

 

【解説」

認知症は、誰もがかかりたくない病気の代表です。
 

認知症患者は、2025年には700万人に達すると予想されています。
 

もはや、、誰がなってもおかしくない時代になったといえます。
 

 近年、認知症が大きな問題になっているのは、日本人の寿命が延びることにより認知症を発症する年齢まで長生きする人が増え、結果的に認知症患者が増えているということです。
 

認知症には大きく4つのタイプがあります。
 

最も多いのは「アルツハイマー病」。脳にアミロイドβというたんぱく質がたまることが主な原因。次に多いのが「血管性認知症」。
 

脳梗塞や脳出血によって脳の神経細胞が死滅してしまいます。

さらに、シヌクレインというたんぱく質が原因で起こる「レビー小体型認知症」、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮する「前頭側頭型認知症」が続きます。

 

 この中で、多くの人が気になるのはアルツハイマー病。脳にアミロイドβがたまると老人斑というシミができ、やがて神経細胞が破壊されて脳が萎縮していきます。

 

 最初に起こる症状は記憶障害です。

記憶をつかさどる海馬に強い萎縮が見られ、記憶を保てなくなるわけです。その後、病気の進行とともに脳全体が萎縮していきます。

 

 何十年も昔の古い記憶よりも、昨日今日の新しい記憶から先に失われるのが特徴です。

講座の中でもお話ししましたが、日常経験するもの忘れが「部分」を忘れるのに対し、認知症は「全体」を忘れます。簡単に言うと、昨日の夕食の内容を忘れるのがもの忘れで、昨日夕食を食べた記憶がないのが認知症です。

 

アルツハイマー病は、図に示したように、正常な状態から「前臨床期」⇒「軽度認知障害(MCI1)」⇒「認知症」というプロセスで進行します

 

1 MCIは、日常生活に支障はないが、認知機能が低下している(もの忘れが多くなる)状態で、認知症の前段階に当たる。MCIと診断されても、正常に戻ることができる可能性がある。

 

脳の萎縮や認知機能の低下は、前臨床期の後半から始まり、MCIのフェーズで一気に進みます。
 

実は、アミロイドβの蓄積は、脳の萎縮や認知機能の低下が進行する遥か前の正常な状態から始まっています

 

そこから軽度認知障害に至るまでの間にアミロイドβの蓄積は着々と進んでいますが(前臨床期)、その間に自覚症状(および他覚的症状)はなく、通常の検査では分かりません。

 

最近の「アミロイドPET検査」による研究で、アルツハイマー病が数十年にわたる病気であることが分かってきました。PET検査で生きている人の脳内の蓄積状況を把握できるようになり、その結果から、発症時には相当な量のアミロイドβが蓄積しており、さらに前に追跡していくと2030年前からたまり始めていることが分かってきました。

 

つまり、アミロイドβがたまり始めてから、MCIを経て認知症を発症するまでには2030年もの長い時間がかかります。これは、7080歳で認知症を発症するとしたら、実は40代や50代からアミロイドβがたまり始めていたということです。

 

 ということは、将来の認知症リスクを下げたいなら、40代や50代といった若い世代から、対策に着手することが望ましいということになるのです。

 

では、具体的にどんなことをするといいのか知りたいところです。

 

 対策のポイントの一つは、脳の血管の老化を防ぎ、血流を高めることです。

 

 血管の老化を進める大きな原因となるのが動脈硬化です。

 

そして、動脈硬化を進める要因として、高血圧、高血糖などがあるのも周知の通り。つまり、動脈硬化を引き起こす「生活習慣病」を防ぐ生活、具体的には食生活の改善、そして有酸素運動などを心がければ、血管の老化を防ぎ、さらにアルツハイマー病のリスクを下げることにつながるというわけです。

 

なお、アミロイドβの蓄積が進んでも、必ずしも認知症を発症するわけではないことも最新の研究から分かっています。
 

 米国で75102歳のシスター678人の協力を得て行われた有名なナン・スタディから、アルツハイマー病を発症するレベルの量のアミロイドβがたまっていたのに、認知症を発症していない人が一定数いることが分かったのです。

 

つまり、アミロイドβが一定量たまっていても、知的活動や生活習慣によって、認知症が発症しにくくなる可能性がある、ということです。人間は病変に打ち勝つことができることが分かってきたのです。

 

 

正解は、42030です。

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