あなたの老化スピードが速いか、遅いかは、45歳時点の老けかたで分かる [薬学博士からのアドバイス] | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2022.01.20

あなたの老化スピードが速いか、遅いかは、45歳時点の老けかたで分かる [薬学博士からのアドバイス]



科学的栄養学No.188

◇あなたの老化スピードが速いか、遅いかは、45歳時点の老けかたで分かる

 

二十数年前、高校の同窓会に65歳になって初めて参加したとき、同じ世代でも老けかたがこんなにも違うものかと驚いたことがあります。後日送られてきた集合写真を改めてみても、老化のスピードに個人差が大きいことを確認できました。

 

実は、最近、この老化の違いが体のさまざまな機能の老化にも関係していることが、ニュージーランドの住民を対象に行われた研究で示されました。

 

その研究によると、45歳時点で生物学的な老化が進んでいる人は、認知機能や身体機能の老化も進んでおり、見た目も老けて見えることが明らかになりました。

 

一般に、加齢に伴って様々な慢性疾患の発症リスクは高くなります。
 

また、高齢者に対する年金制度や福祉政策は、原則として実年齢に基づいて対象者を限定していますが、実際には、元気で自立した生活を送れている90代もいれば、60歳になっていないのにいくつもの病気や認知機能の低下に苦しんでいる人もいます。

 

私は、幸いなことに78歳になりますが、多くの方たちから若くエネルギッシュ、パワフルなどどと云われております。社交辞令を差し引いても客観的に見て確かに若いなと自分でも感じています。

 

実年齢を対象に制定されている現在の社会福祉制度では、そうしたことでは十分ではないような気がします。
 

大事なことは、実年齢よりも生物学的な老化を遅らせることにあると考えます。

 

では、実年齢よりも生物学的老化が早いか、遅いかを判断するにはどうしたらよいのでしょうか。

 

予防効果を最大にするためには、そうした努力を中年期には開始する必要があると考えられています。
 

そこで今回の研究報告は、こうした実年齢が同じ人々の生物学的な老化のスピードを比較することを目的として実施されました。
 

対象となった人たちは、ニュージーランドのダニーデン市に住む、197273年生まれの1037人。これらの人たちの、26歳から45歳までの20年間の老化の進行を追跡しました結果です。

 

具体的には、心血管系、代謝系、免疫系、腎臓、歯、肺の機能を反映する19のバイオマーカーの状態を26歳、32歳、38歳、45歳の時点で評価し、参加者11人について、個々のマーカーの年間変化率を合わせて老化速度としました。
 

参加者全体の平均を参照値とし、ここに該当する人は、実年齢が1歳上昇するごとに生物学的年齢も1歳上昇する、としました。

 

参加者個々の20年間の老化のペースはさまざま、最も遅い人では実年齢が1歳上昇するごとに生物学的には0.4しか年を取っておらず、最も早い人では同じ期間に2.44も老化していたという結果になっています。

 

さらに研究では、老化のペースが速い人を対象に、45歳「認知症と関連づけられる老化のサインが脳に見られるか」「認知機能の低下が進んでいるか」「感覚・運動機能に低下が見られるか」「外見が老けて見えるか」「老化についてどう考えているか」「周囲の人からどう見られているか」について検討しています。

 

老化のペースが速い人では、45歳時点で既に、頭部MRI画像から、認知機能の低下と神経変性疾患のリスクが高い高齢者に認められるような変化、すなわち、大脳皮質が薄い、海馬の体積が小さいなどの変化が生じていたと王国しています。

 

また、老化のペースが速い人は、認知機能検査のスコアも悪く、45歳時点でもさまざまな種類の認知機能に低下が見られたと。
 

さらに、、老化速度が遅い人に比べ、早い人では、45歳時点のIQが有意に低くなっていたという結果です。

 

日常生活においても、記憶力が低下しており、注意に欠けることが多く、たとえば財布や鍵、眼鏡などを置き忘れる、用事をし忘れる、といったことを経験する頻度が高いことも判明した。

 

フレイル(転倒リスク、介助が必要になるリスク、死亡のリスクが高い虚弱状態)の高齢者を同定するために用いられる感覚・運動機能(歩行速度、握力、視覚コントラスト感度、聴力)の評価の結果も、老化のペースが早かった人では、軒並み低くなっていました。

 

45歳時点で老化のペースが速かった集団では、「年を取り、ものごとが悪化している」「若いころに比べて幸せではない」「あまり健康ではない」「実年齢より老けている」「顔が同年齢の人に比べて老けている」「75歳を過ぎて生きているとは思えない」と考える人が多かったとしています。

 

また、友人や周囲の人から健康状態が悪いように見られる、外見が実年齢より老けていると見られる人が多くなっていたとのこと。これまでに行われた高齢者を対象とする複数の研究でも、「自分が老人である」と感じている人はその後、比較的若いうちに加齢関連の疾患と診断されて死亡することが多いと報告されています。

 

得られた結果は、人間の生物学的年齢には45歳の時点で統計学的に有意な差が生じており、老化のペースが速い人には、加齢に関係する機能の低下が生じていることを示しています。

 

研究では、さらに詳細な研究が必要としながらも、もっと前から、前向きな考えを持ち、健康的な生活を心がけ、健康診断を受けて、慢性疾患の危険因子を修正していく必要があると述べています。

 

また、老化のペースが速い人には、実年齢ではなく、生物学的な年齢に基づく支援を行う社会の構築が必要との提言も行っています。

 

 原著論文

 Elliott ML, et al. Nature Aging. 2021; 1:295-308.

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