2021.10.10
腎臓の負担を減らすには、水分を控える方がよいか? [薬学博士からのアドバイス]
脳科学的栄養学No.175
◇腎臓の負担を減らすには、水分を控える方がよいか?
今回は腎臓と水分摂取について、クイズで学んでいきます。
【問題】
腎臓は尿をつくる大切な臓器ですが、腎臓の機能が低下している人は、できるだけ腎臓の負担を減らす必要があります。
そこで、尿のもととなる水分の摂取は、減らしたほうがいいのでしょうか? それとも、減らさないほうがいいのでしょうか?
•(1)水分は減らしたほうがいい
•(2)水分は減らさないほうがいい
さて、みなさんは、どのように考えますか?
選択してください
解説
健康診断の結果、腎機能の低下を指摘されたら、腎臓の負担を減らさなければと考えると思います。
その時迷うのが水分のとり方です。実際には、水分摂取を控えるようにする人が多いのが実情です。
でも、水分をとらないと、逆に腎臓に負担がかかるので注意が必要なのです。
腎臓は1日約150リットルもの血液をろ過し、それをさらに100倍に濃縮して約1.5リットルの尿を生成しています。
しかし、腎機能が下がると尿を濃縮する力が落ち、濃い尿を作ることが困難になります。
同じ量の老廃物を処理するには、代わりに薄い尿をたくさん出すしかなくなります(図参照)。
腎臓の病気のスペシャリストである、横浜市立市民病院腎臓内科長の岩崎滋樹医師は「尿をたくさん作るには、当然たくさんの水が必要です。
水分摂取が腎臓の負担になる、水は飲まないほうがいい、と誤解する人が本当に多いのですが、まったく逆です。腎臓にとっては、水を飲んだほうが毒素を外に出しやすくなります」と指摘しています。
高齢者の中には、水分をしっかりとると夜中のトイレ回数が増えてしまうのではないか、と心配する人も多いはずです。
しかし、腎臓が夜間しっかり働くためには、体の中に十分な水分が必要となります。
意外に思うかもしれませんが、実は腎臓は活動量の多い昼間は、血液を他の臓器と奪い合って老廃物を処理しています。
一方、活動量が少なくなる夜は、多くの血液を腎臓で使うことができます。
腎臓機能が低下すると、昼間に限られた量の血液から尿を作るのが難しくなり、その分が夜に持ち越されて、夜間の尿が増えることになる。
したがって、腎機能が落ちれば、夜間の尿量が増えるのは当然のことなのです。
ですから、水分摂取を控えてしまうと、腎臓が老廃物を排出しきれなくなったり、夜中に脱水に陥ったりすることにもなります。
腎機能が落ちてきた人は特に、水分をセーブしないできちんととるようにしましょう。
ただし、体重が増えないように、すなわち浮腫が出ない範囲にとどめておくことが大切だと、岩崎医師は指摘しています。
また、夜間頻尿が気になる人は、水分ではなく、塩分を控えるのがよいとのこと。
夜間頻尿の原因は、水分より、塩分のとり過ぎであることが多いからだと岩崎医師。
塩分には水を引っ張ってくる性質(保水作用)があるため、体内の塩分量が増えると、水が細胞の中にたまりやすくなります。
これがむくみの正体です。
体にたまった水分は夜になって処理されるため、塩分摂取が多いと、夜中の尿量が増えてしまう。
したがって減塩すれば、体に水分をため込む力が弱くなるので、夜中の尿量の減少につながります。
夜間頻尿には水の飲み過ぎも影響しますが、一番の原因は塩分のとり過ぎなのです
。
夜中にトイレに行く回数が多い人は、塩分を抑えてみましょう。
正解は、(2)水分は減らさないほうがいい です。
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